会長挨拶


京都工芸繊維大学
教授 野村照夫

 1997年に水泳水中運動の教育・研究に関与する人的組織である本学会を事務局として立ち上げました。初代会長の宮下充正先生をはじめ、最前線で活躍されている先生方に諮問委員を依頼し、学会のあり方や進め方について相談しました。そこでスモールステップで無理せず確実に進めとご意見をいただきました。私自身、「なければ作ればいい」をモットーに、水泳のチーム作り、水泳医科学のプロジェクト推進、水泳の科学サポート体制整備など、多くの方々に支えられながら「立ち上げ屋」として手探りで実践してきたコンテキストを持っていましたので、本学会の立ち上げも全力で取り組みました。学会名称やロゴマーク原型の考案、会則制定から、会員管理、学会誌の編集、年次大会の開催等の事業実施の改善を繰り返しました。
 2代会長の故高橋伍郎先生には温かく「問いかけ」による運営のご指南を受けました。筑波大に事務局をお引き受けいただいて以降、組織力や運営力は格段にアップしました。心より感謝申し上げます。
 3代会長の合屋十四秋先生にはクリエイティブなご提案を数多くいただき、BMS2018の開催をはじめ、人的交流の場をさらに広げることができました。
 そして、現在、事務局を新潟医療福祉大にお引き受けいただき、事業承継を進め、運営委員会委員の皆さんのご尽力により、更なる発展に向かっています。四半世紀にわたり学会運営に携わってきた私の使命は、水泳・水中運動について一層多元的な情報交換の場を提供することではないかと思います。

 本学会は水泳・水中運動を中心に据えた研究、教育、環境等について広く議論する学術団体です。本学会の意義を3点指摘できます:(1)専門領域や地域を超えた水泳・水中運動を巡る議論が行われます、(2)多様な水泳・水中運動の研究を通じ、学会員の視野と可能性が拡大されます、(3)水泳・水中運動の研究対象が水域にあり実践と結びついています。尖鋭化が進む諸科学ではありますが、それらの統合、融合、総合もまた実践に活かす重要な手続きです。
 水には色はありませんが、水がなければ色彩豊かな絵は描けないように「水無當於五色、五色弗得不章」(礼記18篇学記)、水があるから健康、教育、競技、安全、治療などに特殊性や相互関連が認められるのだと思います。
 物事の理を探究し知ることと実践を含めた知の獲得を両立してこそ、実践系学会の独自性が発揮されます「格物致知」(礼記大学篇)。たとえ広汎な直接的経験をもっていても、そこから自動的に正しい概念(知識)が生れるわけではない(末永, 1954)ので、経験と窮理との両立が必要なのです。
 学会誌に掲載された論文には、先行研究を踏まえ、問題の所在を確認し、方法や分析を工夫し、仮説を検証する形式を踏襲しつつも独自性や新規性が伺われ、水泳・水中運動の進歩につながる会員の努力や探究心が感じられます。また、学会大会では単に文献検索だけでは得られない「水泳・水中運動が好きだ」というエナジーが感じられ、明日に向かう意欲が掻き立てられます。
 水泳・水中運動の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。学会員のみなさんとともに水泳・水中運動の新しい流れを創造しましょう。

略歴

1981年 筑波大学 体育専門学群 体力学専攻 卒業
1983年 筑波大学大学院 修士課程 体育研究科 コーチ学専攻 修了
1983年 大阪工業大学 助手
1986年 大阪工業大学 講師
1989年 京都工芸繊維大学 助教授
2004年 学位 博士(学術) 取得 京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科
博乙第123号「水泳パフォーマンスの多元的評価」
2005年 京都工芸繊維大学 教授
1994年-1995年 文部省在外研究員としてアメリカ合衆国インディアナ州Ball State University等に赴任

現在の研究テーマ:「身体運動現象の評価とその応用」:
AI姿勢推定や動画処理による動作分析の簡易化。 小学校の水泳授業における安全対策について「ひと、もの、こと」の抽出と集約。

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